2015年11月28日土曜日

旅する携帯電話 


煩わしい時もありますが、通信手段の中心はやはり携帯電話。
便利ですよね。

日本で暮らしている時は特にこだわりもなく、普通にI Phone(ソフトバンク)を使用していました。
通信費が高いな、とは感じていましたが、それが当たり前だと思考停止していました。

携帯電話を持つようになった頃、たしか高校生ぐらいの頃は ”機種代0円!” みたいな広告をよく目にしてたのに、気がつけば携帯電話の本体価格が何万円もするようになっていました。
高性能だし、仕方がないのかな…と思っていましたが、やっぱり携帯に5万円は高すぎると思います!



この春から始まった移動生活をきっかけに通信手段を一新したわけですが、私自身一昔前の海外旅行では携帯電話を全く使いませんでした。

しかし、今回の旅では大活躍でした。車移動が中心の旅だったので、携帯がカーナビの役割を果たしてくれましたし、インターネットに繋がっていることで情報収集のためにネットカフェに行く必要もなくなったので本当に助かりました。

日本、カナダ、アメリカそしてメキシコと移動してきたわけですが、それぞれの国で通信会社のシステムは異なります。同じ端末で過ごすことでそれぞれの国の特徴や、サービスの質に大きな差を感じました。安くてシンプルな方がいいですね。


私たちの使用用途は電話とメールでの連絡、カーナビ、あとは情報集めです。
Miaが吟味を重ねた結果の端末、通信会社、アプリと、2015年現在のそれぞれの国のシステムについてご紹介します。





端末

まずは端末について。
日本で使っていたIPhoneには当然SIMロックがかかっているので、海外では使用できません。
海外でSIMフリーの端末を購入することももちろん可能ですが、使い勝手を考えるとどうしても日本語表記が良かったので、ここはMADE IN JAPNの端末購入を選択しました。

そんなわけで、旅を共にする端末としてFREETELのPriori2を選びました。現在は販売終了してPriori3になっています。
2015年3月当時で本体価格は9800円。そこからさらにキャンペーンを使用して2000円引きで購入しました。

もう1台候補の端末(NOKIA)があったので、実際にヨドバシカメラに行って感触を確かめてから購入を決めました。
その当時(と言っても今年の3月ですが)の私たちにとっては衝撃的だった、契約期間の縛りがないことがFREETELを選ぶ決め手になりました。

それまで使っていたIPhone5に比べるとカメラの画素も荒く、スピーカーの音質もタッチパネルの操作感も劣りますが、通話やインターネットなど必要最低限の操作は問題ありません。
たまにIPhoneを触るとそのスムーズさに惚れ惚れしてしまいますが、FREETELの端末も十分に役割を果たしてくれているので満足しています。
値段がIPhoneの5分の1以下ですからね。

OSはAndroidです。





IP電話業者

端末を手に入れたら次は、通信会社選びです。
それまでは特に何も考えず、自動的にソフトバンクに月々1万円近く支払っていましたが、SIMフリーの端末を手に入れたことで、日本独特のシステム・複数年縛りからも解き放たれ、自由に会社を選択することができました。

通話とインターネットを分けて契約することにした私たちは、まず最初に今後使用する機会が増えるであろう国際電話業界から、ブラステルを選びました。

ブラステルのシステムですが、端末から専用アプリをダウンロードすることで「050」で始まる番号が割り振られます。料金体系はプリペイド式の課金システムです。
海外で使用できるうえに通話料も安く、プリペイド式で無駄がありません。


料金は使用する端末で変わってきますが、FREETELの端末を利用して通話すると、

メキシコから日本の携帯電話にかけた場合、1分あたり52円。固定電話だと42円。
アメリカから日本の携帯にかけた場合、1分あたり21円。固定電話だと11円。
日本国内から日本の携帯にかけた場合、1分あたり15円。固定電話だと3円です。
050の番号を持っている人との通話は無料です。

安いですよね。
いつの間に海外通話ってこんなに安くなっていたのでしょう。

日本にいる家族との連絡手段として、skypeのような無料のソフトを使うことも考えましたが、結局IP電話で連絡を取っています。家族にとっても今までどおり携帯や家庭電話でそのまま話ができる方が簡単みたいです。
skypeのセットアップやカメラの購入など、簡単なんだけど抵抗がある場合もありますからね。


フリーテルとブラステルと名前が似ているので、内容を理解するのに少し時間がかかりましたが、2社とも私たちのニーズにぴったりのサービスを提供してくれています。





SIPアプリ

IP電話の通話に必要なアプリですが、最初はブラステルが推奨している無料アプリ「050Free」を使用していました。
しかし、使っていくうちに通話時のタイムラグが気になりだしました。また、着信ができないということが続いたのでアプリの変更を検討。

その結果、有料アプリの「Acrobits Softphone」に変更しました。
料金は7ドル弱。
このアプリの良い点は”通話時のタイムラグがない”という個人の感覚的な部分になってしまうのですが、以前使っていた050Freeと比較すると大きく通話品質が向上しました。
有料ではありますが値段以上の満足度を得られるアプリです。

Acrobits Softphoneに変更してからは音声通話の際の違和感がなく、普通の携帯電話に近い感覚です。受け手(日本の家族、友人)の反応も上々です。

iOSとの相性がいいという記事を見ますが、Andoroidとの相性も良好。なんの問題もありません。






各国の通信事情・契約システムについて

日本の場合 (インターネット含む) 

インターネットを使用する場合、日本国内では海外に比べてWifiを拾うのに困りました。
よく「Wifiあります」とソフトバンクの犬が言ってるのぼりは見かけたのですが、実際は飛んでないことが多かったです。そののぼりがある店や施設の人もよくわかってないことが多く期待したのに使えないということが何度もありました。


マクドナルドやスターバックスではどこでも飛んでいるのですが、そもそもそういう店がない場所を選んで旅や生活をしていたので、自力で通信手段を確保する必要がありました。


短期間Wifiのモバイルルーターを持つことも考えましたが、通信費を抑えつつ、持ち物を最小限にしておきたかったこともあり、DMMobileのデータSIMプラン(8GB/2140円)に加入し、端末のテザリング機能を利用してWifiルーターの代用としました。

DMMのサイトでは8GBあれば、1ヶ月の間で毎日1時間程度は動画を見たり、Skypeをしたりしても大丈夫!と譜っていました。
しかし実際は30分ほどのSkypeで1GB近くデータ消費してしまいました。

動画を見たりストリームングサイトで音楽を聴くとすぐにデータ容量は減ってしまいましたが、Macbookで必要な調べ物をしたり、メールで連絡をするには不便しませんでした。

IP電話の電波ですが、FREETELもDMMもDocomoの回線を使用しているようです。電波が悪くて困ることはほとんどありませんでした。





カナダの場合

続いて海外の事情です。
日本を出国して最初に訪れたカナダ・バンクーバーでは、フリーWifiが街のいたるところに飛んでいて随分助かりました。

携帯電話端末は2人とも1人1台ずつ持っていましたが、2週間弱の滞在だったので1台はSIMカードを買わずにWifiを拾って過ごしました。
そして、必要な連絡がいつでもできるように1台だけSIMカードを購入することにしました。

まずは最初に、バンクーバー在住の友人(日本人)が教えてくれた日本人経営の携帯ショップに行ってみました。


そこはまさに日本。必要以上に情報が多く、ややこしい話をたくさんされ、選択肢が多すぎる上に訳がわからない料金が細かく散りばめられています。わけのわからないまま言われるがままにサインしてしまいそうでしたが、段々腹が立ってきて悲しい気分になったのでここは却下。
言葉は通じるけど気持ちが全く通じませんでした。


次に訪れたのはカナダの大手通信企業のRogers。
こちらは先ほどのザ・日本の携帯屋さんと打って変わり、説明もシステムもとてもシンプルで分かりやすかったです。
カナダ人の英語は慣れるまで聞き取りずらかったのですが、しっかり気持ちのコミュニケーションが取れる対応だったのでここで契約。


海外で携帯を使用する場合、昔は今ほど携帯電話とインターネットがリンクしていなかったので単純に「60分で◯◯円」みたいに、テレホンカードを買うように簡単に使用できていました。

今は通話とデータで料金体系が2つになるので、少しややこしくはなりましたが、それでも日本のシステムと比べると雲泥の差です。
通話プランとインターネットのプランとSIMカードの代金をを単純に足し算するだけです。分かりやすいですね。

SIMカード本体(10ドル)と契約手数料(25ドル)、20ドルのTalk,Text & Internet Planを選んで税金込みで合計61ドルでした。

ちなみに最初に行った日本人経営の携帯ショップでは同じ内容で100ドル近かったです。なんでその金額になるのか説明が複雑すぎてわかりませんでしたが。





アメリカの場合

アメリカは1週間の滞在で、かつほとんどキャンプをしていたので、必要な時だけ野良Wifiを拾ってやり過ごしました!
目的地までの地図は事前にプリントアウトしておきました。





メキシコの場合
 
そして現在メキシコ。
カナダと同じように1台はSIM無しで、もう1台はこちらの最大手TELCELのSIMカードを利用しています。
私たちが使用しているSIMのプランは1ヶ月100ペソ(750円)で、容量が無くなったら追加で購入することができるようになっていますが、今の所ほとんど追加無しで過ごせています。

メキシコでは日本でいうところのLINEみたいなアプリで「Whats App」というアプリが一般的です。携帯端末のメッセンジャーサービスでは世界1位のようです。中国で人気の通信アプリはWechatでした。各国人気のアプリが違うのが面白いですね。

メキシコでは(アメリカでも)大抵みんなWhats Appをインストールしてやりとりしているので、友人同士のコミュニケーションは無料でできています。

SIMカードは街中のTELCELのお店で購入できるうえに、こちらのコンビニのOXXO(オクソ)でも購入可能です。
ちなみにまだ購入したことはありませんが屋台でも売ってます。SIMカード。





通信費に限って言うと日本が圧倒的に高額で、さらにシステムが複雑です。
携帯電話の手続きに関してはうんざりすることが多かったですが、それは日本特有だったんですね。
しかしながら日本でも少しずつSIMフリーの携帯端末も一般的になってきており、選択肢は増えました。
あとはWifiを使用できる範囲が実用的になればなお嬉しいですね。



2015年11月22日日曜日

テキスキアパンで鉱物採集

オパール (Opal)

トラコテの水を汲ませてもらった後は、そのままケレタロへ。

グアナファトで鉱物を探していると、多くの人にケレタロに行くことを勧められました。
なぜかというとケレタロには石を磨いたり加工したりしてくれる職人がいるとのこと。
そのためにメキシコ中部高原地帯の鉱物が集まってきているという話を聞きました。

ケレタロはグアナファトに比べると随分大きな街なので、ある程度事前に当たりをつけてから訪れたかったのですが、インターネットで調べても鉱物を磨いてくれる店や人といった情報は出てきませんでした。
メキシコで何かモノを探す時、インターネットでは見つからないことが少なくありません。それでも直接人に聞いて、少しずつ範囲を狭めていくと最終的には見つけることができます。時間と手間がかかりますが見つけられた時の喜びも格別です。
街のどこに石を扱っている職人がいるのかは行ってみないことには分からない状態でしたが、口コミを頼りにケレタロへ向かいました。

ケレタロに着き、まずは宿泊先であるAir bnbのオーナーに街の様子を聞き、目星をつけて街の中心へ。
そしてセントロでまた何人かに聞き込みをすると、アルテサニアと呼ばれている人たちが手作りの民芸品やアクセサリーを売っている屋台通りがあることが判明。
言われた通りそこに行くと、確かにマクラメや石を使ったハンドメイドな品々が並んでいます。
順に話を聞いていくと、奥の方に石を磨いてくれるおじさんを見つけました!
口コミの情報は正しかったです。遠かったけど、確かに居ました。

グアナファトでいろんな人が言ってた”石を磨いてくれる人”って、このおじさんのことだったのか、それとも他にもいるのかは分かりませんが無事に一つ目の目標が達成できました。



そして翌日。

私たちには原石の加工を依頼することと、もう一つ、ケレタロを訪れたい理由がありました。
それはケレタロには今も稼働しているオパール鉱山があるということです。

日本でも昭和の時代にはたくさんの鉱山が稼働して日本の経済を支えていましたが、エネルギー需要が変化した影響もあり、現在日本で稼働している鉱山は両手で数えられるほどしかありません。

そのため現在の日本では鉱物採集をするとなると、鉱山跡を訪れることになります。
鉱山跡は廃墟となっているところが多く、人もほとんど入っていないのでその雰囲気は独特なものがあります。
昔から鉱物採集を続けておられる方に話を聞くと、鉱山で働いている人との触れ合いがあったり、石の話を直接聞く機会があったりと、羨ましく思っていました。

なんといっても現役の鉱山には、昨日まで出ていなかったものがもしかしたら今日出てくるかもしれないという期待感があります。昔の日本ではそれを感じながら鉱山を訪れていたのではないでしょうか。


日本での鉱物市場は、各地で定期的に開催されているミネラルショーが最も大きな展示会です。国内の石屋や、インドやアフガニスタン、南アフリカなど世界各地から現地の鉱物が持ち込まれ販売されています。
しかし、いくつかのミネラルショーを見て回ると、出店している店も売っている鉱物も大体同じというようなことが多々あります。
特に日本産の鉱物は掘り尽くされている感が強く、新たに状態のいいものが発見されてそれが市場に並ぶということはかなり確率が低い状態です。皆無と言ってもいいでしょう。

どの鉱物にも言えることですが、状態の良いものは市場に出るとすぐに個人のコレクターの手元に渡りますし、新たに鉱物採集をして、それを売っている人の数というのも限られています。
つまり、総数が限られている上に循環が滞っている状態のように感じます。

しかし、ここメキシコではまだまだたくさんの鉱山が稼働しているため、様々な鉱物が日々入れ替わって出回っています。
つまり、まだ誰も目にしたことがない鉱物が今日も掘り出され続けているのです!



さてそのオパール鉱山ですが、ケレタロから1時間ほど離れたところにあるテキスキアパンという小さな街の近くにあります。
鉱山の近くまで行き人に尋ねると、そのあたりでは有名なようで鉱山ツアーを主催している民家の写真を見せてくれました。

テキスキアパンのさらに奥にある村、トリ二ダッドです。

写真で見た通りの民家の前に車を止めると、犬が出迎えてくれました。


大きいけど穏やかな犬。怖くない。



おばさんが出てきて、中に案内してくれました。
壁には日本の雑誌の記事なども掲示してあり、ケレタロやテキスキアパン発のエクスカーションツアーとして紹介されていました。

建物の中には至るところに石がゴロゴロしていて、すでにオパールがチラチラ見えています。
その一番奥の部屋ではおじいさんがオパールを磨いていました。


モーターを改造したような研磨機。



石を磨くには目の粗いヤスリから磨いていき、少しずつヤスリの目を細かくしていき、最後にダイヤモンドペーストで表面を仕上げます。
熟練の磨きっぷりがオパールにさらなる輝きをもたらしています。



オパールのルース小。このサイズは5mm〜。



磨きの見学が終わると、オパールを展示販売している部屋に案内されました。
まばゆい輝きを放つオパールに目を奪われてしまいます。



深みのある緑と青。吸い込まれそう。



見学しながら職人さんと話しているとなんとこの方はこの道56年。半世紀です。
なかなか商売上手で、日本人がここでたくさん購入して持ち帰っているようです。
辺境の村でも必ず日本人は来ていますね。
この3倍の値段で売れるんだから、安いよー。と言ってきます。



右上の部分がオパール。


しばらく待ち時間があり、その間に名前を書いて料金を支払います。
ツアーの料金は一人80ペソ。
壁に掲示してある雑誌の記事では50ペソですが、値上がりしていました。
メキシコの物価はこの10年で料理の値段や宿の値段など、倍近く上がっていることが多いです。
私たちは朝10:30からのコースに参加しました。


おばさんが手際よく参加者をさばきながら注意事項を説明してくれます。
「山にはトイレがないので出発前にはトイレを済ましてね。水を持ってない人はこれを持っていってね!」
と口を動かしながら、ペットボトルの水、拾ったオパールを入れるビニール袋を配り、石を砕く用のハンマーを車に積み込んでいました。

15人くらい集まったところでいよいよ鉱山へ出発です。
TOYOTAのトラックの荷台に10人くらいが乗り、私たちはその後ろから4輪駆動の車で山を登っていきました。


犬がひょこひょこ車についていき、たまに振り返ってくれる。



ツアーガイドの飼っている犬が車を追いかけて、山道をずーっとついてきていました。
可愛い犬に和みながら山道を登って行きます。
15分くらい山道を走っている間に、遠くからダイナマイトの爆発音が聞こえてきます。



足元の石、全てに可能性あり。



見学可能なエリアで車を降りて、一同車座になってオパールを構成する元素や、生成の過程などをレクチャーしてもらいます。
話の途中のクイズに正解するとオパールがもらえます。
その後、坑道を見学。岩壁のなかにもオパールがちらほら見えるし足元にもキラキラ見えます。
気になって話が耳に入りません。



オパール鉱山の歴史やオパールの性質、特徴について教えてくれる。



ハンマーを貸して欲しい人はここで借りることもできます。
結局私たちは説明の途中から、めぼしい母岩を見つけてはハンマーで砕き始めました。
足元のにたくさん落ちている石もよく見ればどこかにオパール質の部分があるくらい、オパールだらけです。



坑道。花火サイズのダイナマイト体験もあり。



そこからは小一時間ほど採集体験の時間でしたが、ガイドに
「もう帰るよ」
と声をかけられるまで一心不乱にハンマーを降り続けました。

結果は小さいサイズのものしか見つけることはできませんでしたが、日本で見られるオパールとは違い、美しい色のものをみつけることができました。

小学生ぐらいのメキシコ人の男の子も夢中になっており、いいのを見つけたら見せ合ったり、交換したり楽しみながら採集することができました。









オパールの美しさの魅力は、遊色効果と言われる虹のような色彩です。
遊色効果とは結晶の構造や粒子の配列に光が乱反射することによって起こる現象で、オパールの中にはあたかも宇宙に見える銀河のような輝きを放つものもあります。

販売されていたオパール。オパールは水分を含む鉱物のため、保湿のために
水を入れた瓶に保存されていることが多い。このオパールも瓶の水の中。



本当は遊色を含むオパールを見つけたかったのですが、とびきりなものはなかなか見つけられませんでした。
それでも、見つけたオパールの中にも角度によって少し遊色が見られるものもあり、傾けたり光に当てたありしてその輝きを楽しみながら下山しました。



採集したもの。遊色は見られないが透明度の高いオレンジ。

採取したもの2。丸みのあるフォルム。かわいい。


採集したオパールはすべて持ち帰り可能で、かなり満足度の高いツアーでした。
私たち以外は家族づれが多く、ケレタロ観光のオプションとして楽しんでいたようです。オパールはキラリと光るので子供も見つけやすく、なおかつ綺麗なので、興奮して楽しんでいました。

下山して最初の建物に戻ると12:30くらいだったので、大体2、3時間のツアーだと思います。
ガイドのお兄さんも優しいし、終始穏やかな雰囲気の中、オパールもたくさん見つけることができたので私たちはご満悦でした。



テキスキアパンも可愛い街で民芸品のレベルも高いので、ケレタロに行く機会があればテキスキアパン&オパール鉱山コースはかなりオススメです!

2015年11月16日月曜日

奇跡の水と呼ばれた湧き水

トラコテの水

メキシコに来てから、湧き水を探し続けるもののなかなか巡り会えない日々でしたが、ついに見つけました!

ようやく見つけたその水が湧いているのは、グアナファトとメキシコシティの間にあるケレタロという町の近く、トラコテという小さな村。

調べてみると、トラコテの水は世界三大奇跡の水と呼ばれていて、多い時には一日数千人もの水を求める人が列を作り、2〜3時間の待ち時間は当たり前とのこと。

なぜメキシコの片田舎に湧いている湧き水がそんなにも世界の人々を惹きつけたのかというと、飲むと腰痛やアトピー、喘息の症状が緩和され、エイズや癌など重い病気に対しても病状改善効果が見られる、という奇跡の水だそうです。
その奇跡の謂れは、その湧き水の土地の持ち主チャヒンさんの犬が怪我をした時のこと。



今から20数年前、トラコテに足を怪我して歩けなくなってしまった犬がいました。
不憫に思った飼い主は、何もしてあげることができない歯がゆさから、せめて綺麗な水を飲ませてやろうと思い、犬を抱きかかえて水場に連れて行き水を飲ませました。
すると、今まで歩けなかった犬が再び歩き出したのです。

この時は何が原因で歩けるようになったのか不思議に思い、
「この水は魔法の水なんだろう」と冗談半分に犬の回復をただ喜んでいました。
しかしその後も体の不調を訴える人がこの水を飲むと回復することが続きました。
そしていつしか人づてにその噂が広がり、世界中から人が集まるようになったそうです。
その総数、延べ800万人。

その後、ウルグアイの病院で患者にこの水を飲んでもらった結果、病状改善に効果があるという臨床データが得られたり、日本の大学の研究で活性水素が通常の水の10倍近く含まれていることが判明したりしたそうです。




なんとも凄そうな水です。まさに奇跡。
これは是非飲んでみたいと思い、意気揚々とトラコテへ車で向かいました。


グアナファトからサンミゲルアジェンデを経由し、111号線を東に向かって走り、右折で57号線に入ります。その後モンパニという集落を通過してトラコテへ。

57号線の途中から道は未舗装になり、視界は開けているもののいつ行き止まりになってもおかしくないような雰囲気です。少し不安になり、すれ違った人に道を聞いてみました。

「もうすこし進むとモンパニあたりにたくさん人が歩いてるからそのまま真っ直ぐだよ」

感じのいいお兄さんにそう言われたのでその通りに進むと、確かにモンパニのあたりにたくさん人が歩いていました。集落のようですが建物はほとんど目につかず、ただ荒野を人がたくさん歩いています。
モンパニの人々のこちらに対する視線が、普段外国人はあまり通ってない道なんだということを表していました。



モンパニを越えると再び舗装された道路になり、10分ほどして奇跡の水が湧く村、トラコテ・エル・バホに着きました。

トラコテは何の変哲もないメキシコの片田舎という感じで、本当にこの村に800万人も来たのか?と疑いたくなるような普通の村です。

早速、売店のお姉さんにどこに奇跡の水が湧いているの聞いてみました。すると、今は開いてないとか、よく知らないとか、なんだか気だるい対応。

あまり歓迎はされていない様子でしたが、知らないはずはないだろうと思いもう少し突っ込んで聞いてみると、売店からわずか2、30m離れた施設が水をくみ上げている場所だということが分かりました。

この小さな村で世界的に有名になった水のことを分からないはずもないはずなのに、そういう対応をされるということは過去に嫌な思いをしたのか、また別の理由で水を汲みに来る部外者に良い印象を持っていないのかのどちらかだと思われ、この時点で少し違和感を感じました。

水汲み場の外観。なかなか大きな施設です。


村全体に漂う若干閉鎖的な雰囲気を感じながらも、売店のお姉さんに教えてもらった水色の扉をノックしました。


少し間があって、中から職員の女性が出てきてました。
”私たちは日本から来ていて水を飲んで汲みたい”ということを彼女に伝えると、少しはにかみながら扉を開けてくれました。

大丈夫そうです。歓迎されていない感じではありません。
一安心して少し話をしていると、敷地内へ入るようにと案内されました。

扉の奥には広い敷地が広がっていて、塀から何本も取水できるようなパイプが突き出ており、かつてはたくさんの人が水を汲んでいた景色が想像できました。
でも、その日は他に誰も水を汲みに来ている人はいませんでした。

白い壁から水色の取水パイプが何本も突き出ている。


奥へと進んでいくといくつかの建物が並んで建っていて、その一番奥の部屋で水を汲ませてもらうことができました。
部屋には新聞記事や臨床データの証明書、病院や政府からの感謝状が壁一面に展示されています。
過去にはあのモハメドアリも来てたようです。

メキシコに来て初めての湧き水。
ドキドキしながら飲んでみると…

水汲み場。壁一面に新聞記事などが展示されている。


クセはなく、口当たりが少し硬い感じ。硬水なのかな。
地下水のはずなのにそんなに冷たくはない。

施設の雰囲気もあり、山の中で湧いている水を飲んだ時のような体が喜ぶ高揚感はありません。
まあ普通の美味しい水です。

汲み上げてる装置はどういう役割なのかわかりませんが、無機質な感じです。
職員のお兄さんに何のための装置なのか質問してみるも、
「僕がここに来た時にはもうあったけど、何か知らない」とのこと。

後から詳しく調べてみると、かなり高濃度のミネラルを含んでいるようで(カルシウムは100倍以上、マグネシウムは200倍以上!)、森や山のような植物の多い地層を通過してきたというよりは岩盤を通ってきた水なのでしょう。

水素とミネラルたっぷりの水は、味というより効能がありそうです。
なんとなく秋田の玉川温泉を思い出しました。


長らく稼働していないであろうなにかの機械。哀愁が漂う。


20Lのガラフォン2つに水を汲ませてもらってその場を後にしました。
施設を出た後、重いガラフォンを車まで運んでくれたお兄さんにチップを渡そうと思っていたので、
「お金を払う必要はあるのですか?」と一応聞いてみました。

事前に調べていた内容では、持ち主のチャヒンさんは病気で困っているより多くの人に飲んでもらいたいという思いからこの場所を開放しているとのことでした。
お金を請求したことも一度もないと。


しかしお兄さんからは予想外の返答。

「ガラフォン2つだから200ペソかな。今は売っているからね」


…え?変わったの?あれ?


チップを払いたかっただけなのに少し残念な気分になりました。
納得できなかったので自分の思っていたイメージと違うことと、支払う必要があるのならなぜ最初に伝えてくれなかったのかと話してみると、
「払わなくてもいいけど、聞かれたからそう言ったんだよ。」と言われました。

結局、チップとして50ペソ支払いました。



なんだか後味の悪いこの感じ、一つの記憶がよみがえりました。
それはウアウトラという村での記憶。

オアハカの近くにあるウアウトラ・デ・ヒメネスという村には昔から幻覚作用のあるキノコを用いて精神療法を行うシャーマンがいて、独自な文化を形成していました。しかし、1960年代にビートルズや、ストーンズ、ボブ・ディランといった有名人が彼女の元を訪れたことで、こちらもトラコテの奇跡の水と同じように噂が噂を呼び、村には当時全盛だったヒッピーが大挙して押し寄せてしまいました。

結局サビーナはその後、村の神聖な儀式を世界に漏らした罰として村を追い出されてしまいました。
サビーナもチャヒンさんと同じく、善意と使命感を持ってセレモニーを行っていたようですが、結果として村の人から蔑まれ、寂しい晩年を過ごしたそうです。

現在はサビーナの一番弟子がそのセレモニーを継続しています。私が訪れた10年前の時点で1000ペソ程度でしたが、最近も同じ値段で続けているようです。
適正な値段をつけることで村の混乱を防ぐ必要があったのだと思います。



トラコテもウアウトラも同じような静かな村です。
村にあまりにも多くの人々が訪れ、対応しているうちに擦れたと言えばそれまでですが、村の人たちは自分たちの穏やかな生活を一変させてしまった強烈な人の欲望の波に傷ついたのだと思います。

奇跡の水も、キノコのセレモニーも、メキシコの魅力を感じさせてくれる素晴らしい文化や自然なのに、元々の愛が薄れてしまったように感じられるのが少し残念でしたが、奇跡の水を飲むことができたのは素直に嬉しかったです。

もしこの先トラコテの水を売るようになっても、自分がそこに価値を感じるのであれば喜んでお金を払って水を飲みたいと思います。

なお、こちらは月曜から土曜の夕方5時までオープンしているそうで、また訪れたいと思っています。ちなみにケレタロ方面から行くと道も全て舗装されていて気持ちのいい道です。



世界には魔法がかかったような場所や自然、文化や人がたくさん存在しています。
それらは時に人生観を大きく変えるほどの感動を与えてくれます。

今も続いているその魔法に対してリスペクトを持って接することが大切だと思いました。

興味を持って体験することが、対象を搾取してしまているような状態にならないように、貴重なものほど壊れる可能性が高いことを自覚して、自分を感動させてくれたものが持続できるような付き合い方を心がけたいと思いました。




2015年11月14日土曜日

Je vous présente toutes mes condoléances


音楽やサッカーに感覚を委ねている瞬間に殺されるなんて、なんて悲しいことなんだ。

どのような思想を持とうと自由なのかもしれないが、他者を排除することを肯定し、それに暴力を伴っても良いという思考回路はどうしても理解できない。

多くのイスラム教徒は真面目で信心深いのかもしれないが、このような暴力的な思考に陥る可能性を含んだ宗教であることは確かだと思う。

拡大する原理主義とどう向き合うべきなのか考え続けても答えは出ないが、文化を暴力で破壊されることが本当に悲しい。







2015年11月4日水曜日

旅や移住を助けてくれる銀行

海外で使っている銀行と海外送金

お金の話です。

私の場合今までの海外旅行では日本円を現金で持って行って現地で両替するというシンプルなものでした。
しかし今回は旅行ではなく引っ越しなので、現金を持っていくわけにはいきません。
毎月の家賃や大学の授業料、車の代金など、大きな金額のお金が必要となることは分かっていました。
海外対応しているキャッシュカードを利用してATMから必要な金額を引き出すにしても1日に引き出せる限度額があり、その都度手数料もかかります。


そういうわけで、頑張って貯めたなけなしのお金、日本円をメキシコペソに効率よく移動させる必要がありました。
また、中南米では珍しくない急な通貨の暴落に対する備えとして、資産を分散させておきたいという思いもありました。

円とペソに分けて資産を保持し、なにかあった時にはインターネットですぐに対応できる状態にしておきたかったのです。


日本では特に理由もなく、いつの間にかUFJを主に使っていましたが、旅や引っ越しと移動が重なる事をきっかけに、状況に合った銀行を選び直し、新しく口座を開設しました。

4月から6月までは東北・北海道、7月はカナダ・アメリカを旅して、その後メキシコという流れだったので、旅の期間にそれぞれの土地で使いやすい銀行、海外送金に適した銀行をその時々に応じて使い分けていました。

ちなみに私は海外送金を今まで一度もしたことがなかったので、最初はあまりの複雑さに驚きました。
正直言って本当に面倒くさいです。
Miaが全て調べてくれて、説明を聞くのですがなかなか全体像が見えませんでした。
資産を移動するのって難しいんですね。

そんなわけで、新たに開設した銀行口座は全部で以下の5つです。

新生銀行
ジャパンネット銀行
楽天銀行
カレンシーオンライン (ニュージーランド)
スコシアバンク (メキシコ)

それぞれ長所短所があり、状況に応じて使い分けました。
各銀行の特徴と選んだ理由、そしてどのような流れで海外送金を行ったかを順を追って説明します。



新生銀行

日本国内の旅行に最適だったのは新生銀行でした。ほとんどすべてのATMが手数料無料で利用できます。田舎のコンビニでもゆうちょでも手数料無料なので気が楽でした。

新生銀行の口座間の振込手数料は無料で、他の銀行への振込手数料も月1回までは無料でした。
ネットバンクに近い感覚ですが実店舗もあります。困った時に相談できるのがいいですね。

プラスマークがあるので海外ATMでも利用可能です。
レートに上乗せされる手数料は4%。まずまずです。

海外送金の際にもお世話になりました。
送金手数料は2000円、円建ての場合は送金額の0.1%の円為替手数料が発生します。
送金限度額は30万円に設定されていますが、変更届けを出すことで上限1000万円までは変更することが可能です。




ジャパンネット銀行

アメリカ・カナダの旅も含めて、メキシコに来てからもかなり重宝しているのがジャパンネット銀行のカードです。
プラスマークが付いている海外のATMならどこでも使えて、レートに上乗せされる手数料は 3.02%。新生銀行より1%近く抑えられています。

デビットカードとして利用できるのも大きな魅力です。
デビット機能が付いていると、クレジットカードと同じように使えます(インターネットでの決済ができる)が、引き落としはその瞬間口座からの引き落としになります。

海外で使ってもその場で残高確認をすればすぐにレートもわかるし、クレジットカードのように何に使ったか分からないまとまった請求が来るという事態も無くなります。
また、残高が無いと引き落とせません。




楽天銀行

日本で保持している円をいざという時に海外送金できることと、インターネット上で操作しやすいという理由で選びました。

楽天銀行にも海外送金のサービスはありますが、メキシコペソは非対応でした。
また、送金手数料は750円と大きく安く表示していますが、実際に送金するとなるとそれ以外になんだかんだと名目がついて費用がかさみ(円送金手数料が3000円、海外中継銀行手数料1000円など)手数料だけで5000円近くもかかります。

さらに送金限度額が1回(1日)100万円まで、なので、それ以上の金額を送金するとなるとその都度この手数料がかかってきます。

facebookの友達に振り込み??もできるようになったらしいですが、怖いですね。
今のところはまだ恩恵に預かっていませんが、将来的に必要になるかもしれません。





カレンシーオンライン (ニュージーランド)

いろいろな方法を検討した結果、海外送金のレートが一番良かったのがカレンシーオンラインです。
ニュージーランドにある銀行で、両替・送金に特化した銀行です。日本人も現地で働いているので電話対応してくれます。
海外送金手数料は通貨によって異なりますが、円の場合100万円以上の利用だと手数料は無料で、両替のレートも日本国内の銀行に比べて随分良いです。
あらかじめレートを指定しておいて、そのレートになったら自動的に両替できるように依頼をすることもできます。いわゆる指値注文ですね。

海外送金で利用しました。
後ほどもう一度噛み砕きますが、まずはカレンシーの口座を作ったらそこに円建てで送金しておき、メキシコペソのレートを見計らって円からペソに両替してもらい、その後メキシコで開設した銀行口座にペソで送金してもらいました。





スコシアバンク(メキシコ)

メキシコでの口座開設はまあどこでも良かったのですが、海外送金に対応してそうなカナダ資本のスコシアアバンクを選びました
メキシコの大手銀行は窓口がいつもものすごく混んでいますが、スコシアバンクはそんなに混んでなかったのも好印象でした。
グアナファトのスコシアバンクには英語を話せる人が2人常駐しています。

必要な書類は、

・パスポート
・レジデンシャルカード(滞在許可書)
・コントラート(住居の契約書)
・公共料金の明細

それ以外に申請の際に必要な情報が

・保証人が2人必要でフルネームと電話番号
・Beneficiario( 遺産相続人) 本人が亡くなった場合口座のお金を渡す人。 

口座には常に1500ペソをキープしておかなければならないそうです。






海外送金をする

さて、必要な銀行の準備が整ったらいよいよ送金です。

しかし、残念な事に最近規約が変わってカレンシーオンラインはメキシコに住んでいる人は利用できなくなりました。

なので、前から利用対象外だったアメリカとメキシコ以外の国、つまり南米・ヨーロッパ・アフリカ・アジア(日本在住者も)などに送金する場合はこの方法で送金できます。



手順は3段階で簡単に言うと、

新生銀行の海外送金サービス、"Goレミット"を使ってカレンシーオンラインに円建てで入金。
                ↓
カレンシーオンラインでレートの良い日を見計らって円からメキシコペソへ両替。
                ↓
カレンシーオンラインから現地メキシコの口座であるスコシアバンクへ送金依頼をしてメキシコペソで送金。



これで送金完了です。
簡単に言うと本当に簡単そうですが、一つ一つの行程にお金を扱う緊張感があるので、大変疲れました。
全部調べて道筋を作ってくれたmiaに感謝です。

ほとんどネット上で数字を入力してクリックすると、メキシコでお金を引き出せるというのは便利ですが不思議です。
また、国を跨ぐために通貨の変動で資産が減ったり増えたりすると、お金の意味について考えさせられました。

海外送金には裏技を含めていろいろな方法がありそうですが、現時点での私たちの選択はこのような流れでした。

海外に出るタイミングや資産の持ち方によってケースバイケースが多いと思いますが、未来に役立ちそうな(というか必要性が高まりそうな)経験・スキルであると感じました。

2015年11月1日日曜日

ネマガリタケでチンジャオロースー

ネマガリタケ

以前住んでいた京都市西京区はたけのこの産地として有名でした。
たけのこって美味しいですよね〜。季節を感じられて贅沢な気分になります。
その分お値段もそこそこするので、たまのご馳走という感じでした。

しかし、東北地方でたけのこといえば、ネマガリタケのことを言います。
こちらのたけのこも同じように贅沢な気分を味わえるけど、大きく違うのは自分で探して採集できること!
頑張れば頑張った分だけ味わうことができます。

思い出すだけで思わずよだれが出てくる、シャキシャキとした食感と、若芽の新鮮で上品な香り。焼いても煮ても天ぷらにしても美味いネマガリタケ。
普通のタケノコと比べても全く遜色ありません。むしろ当たり外れが少ない気がします。
ただ、収穫してその日のうちに下処理をしないとアクが出てしまうこともあり、関東以西にはあまり出回っていない気がします。

ネマガリタケは別名で、チシマザサというのが本来の名前です。姫タケと呼んでいる地方もあるようです。大型の笹の一種で、東北地方から北海道、サハリンに分布しています。
成長した笹の背丈が2mから3mを超えることも多く、ネマガリタケの笹薮はさながら森のようで、初めて訪れた山や土地勘のない場所だと一瞬で方向感覚を失ってしまいます。

その魅力ゆえに、毎年笹薮で迷って遭難する人が後を絶ちません。
さらに、このネマガリタケはクマの大好物でもあり、遭遇する可能性も非常に高くなります。そのため採集しに来ている人たちは必ずクマ鈴をガランゴロンと鳴らしながら笹薮をウロウロしています。




北海道でも山菜の図鑑など本の写真を見ながら探していたのですが、本物のネマガリタケは見つけられず、普通の笹の芽をネマガリタケだと思って食べてたこともありました。
普通の笹の芽も食べられるのですが、やや青臭いし、まあ食べられるかなって感じの食材です。

そして、私たちもついに長らく探し求めていたネマガリタケを見つけました。
あれは6月に入ってすぐ、秋田県玉川温泉の近くの笹薮でのことでした。
キャンプしていた太平山リゾート公園を管理しているおじさんに教えてもらった峠を走っていると、辺り一帯がそれらしき笹薮になってきたので、車を停めて笹薮の中へ。

自分の背丈を優に超える笹を掻き分けながら、目を凝らしているとついに発見しました!
何度も間違えて「これかな〜」とただの笹を収穫していましたが、本物はやはり違います。
本物って雰囲気があります!

ネマガリタケ。色や形が地域によって少し違う。


初めてのネマガリタケに興奮しながら収穫していると、突然ガサガサっと音がして生き物の気配を感じました。

クッ、クマ?!

一瞬血の気が引き、体が硬直しました。
クマがいるかも、と心の準備はしていましたが、どうすればいいか考えを巡らせているうちにガサガサと何かが少しずつこちらへ近づいてきます。

武器になるようなものは収穫に使っていたハサミのみ。
ハサミでクマに対峙するのはあまりにも心もとなかったのですが、下手に背中を向ける方が怖かったので、意を決して待ち構えました。


すると、現れたのはたけのこを取りに来ていたおじさんでした。
おじさんも同じように驚いたようで思わずお互い「うわっ!」 
と声をあげてしまいました。

結構焦りましたが、おじさんでよかったです。ちょうどネマガリシーズン真っ最中だったので、その後も10分おきくらいに笹薮からガサガサと別のおじさんが何人も出てきました。

後で地元の方に話を聞くと
「この時期は町に人がいなくなって、みんな山に入るの。山の中の方が人に会う」
とおっしゃってました。

もしあなたが東北、北海道の春山をドライブしていて、何もない山道の脇に車がたくさん停まっていたら、つまりそれは間違いなくそこにネマガリタケが生えているというサインです。





そんなことで肝を冷やしながらも、初めての収穫に喜びながら車に戻りました。
すると、私たちが駐車していた車の近くに人影が。

それは、ずた袋みたいなリュックサックパンパンにネマガリタケを詰め込んだ、まるで昔話にでてくる優しい妖怪みたいな二人組のおじいさんでした。

目と目があって何か話しかけられましたが、何を言ってるかまったくわかりません。
なんなんだろうと近づいて話してみると、どうやらネマガリタケのことについて何か言っています。

そこで、こんなん取りました〜と、私たちの収穫したネマガリタケを見せると、また何やら言っています。
もにょもにょ言いながら、背中のリュックサックからすっと太いネマガリタケを取り出して手に持っていた鎌でネマガリタケの節をサクッサクッと落としていきます。
そして、節の部分は硬くて食べられないから、節と節の間の部分を食べるんだということを教えてくれました。
根元付近の節は硬くてナイフでトントンしても切れません。少しずつの先端の方に向かって順に節を落としていき、節でもサクッといけるようになれば、そこから先っぽまでは柔らかくて食べられるとのことでした。

十分に言葉は通じませんでしたがネマガリタケの処理の方法、食べられる部分をジェスチャーで教えてくれようとしてたのです。
なにか、ラオスの山村でおばあちゃんと身振り手振りでコミュニケーションが取れた時と同じような楽しい気持ちになりました。


山に入っている60代、70代の人たちは、自然と共存する多くの知恵や知識を持っています。
子供の頃から蓄積されたその知恵や知識を直接教えてもらえることは、本やインターネットで得た情報と違って、体験を伴った記憶として自分に蓄積されていきます。
学ぶ喜びを感じられる瞬間です。





ネマガリタケは東北・北海道地方においては特に珍しい植物ではなく、群生しているので採集できるポイントは多くあるようです。
いろんな山で笹薮を見つけては少し山に入って探すということを繰り返した結果、ある条件を満たしている場所に分布していることに気がつきました。

それは酸性泉の温泉が近くにあって、少し標高の高い峠(1000mくらい)にはほぼ確実にネマガリタケが分布しているという事実。
この条件を満たす地域では、大抵見つけることができました。

茹でて皮を剥いた状態。これを瓶詰めすると1年くらいは持つそうです。




収穫したネマガリタケは軽く茹でて皮をむいて水につけておくとある程度の期間保存ができます。
代表的なオススメの食べ方としては、味噌汁の具にしたり、皮ごと焼いて味噌につけて食べるのがうまい!とよく聞きました。

焼いてマヨネーズをつけても美味しいし、タケノコご飯にしても美味しいかったです。
でも、いろいろ試した結果一番美味しかったのは…


豚肉とネマガリタケのチンジャオロースー。
これは絶品です。

京都の錦市場で売っているような値が張る高いたけのこではもったいなくてなかなかできないけど、ネマガリタケなら惜しげも無く炒められます!
春の東北に行く機会があれば、ぜひ採って焼いて食べてみてください。