2015年11月1日日曜日

ネマガリタケでチンジャオロースー

ネマガリタケ

以前住んでいた京都市西京区はたけのこの産地として有名でした。
たけのこって美味しいですよね〜。季節を感じられて贅沢な気分になります。
その分お値段もそこそこするので、たまのご馳走という感じでした。

しかし、東北地方でたけのこといえば、ネマガリタケのことを言います。
こちらのたけのこも同じように贅沢な気分を味わえるけど、大きく違うのは自分で探して採集できること!
頑張れば頑張った分だけ味わうことができます。

思い出すだけで思わずよだれが出てくる、シャキシャキとした食感と、若芽の新鮮で上品な香り。焼いても煮ても天ぷらにしても美味いネマガリタケ。
普通のタケノコと比べても全く遜色ありません。むしろ当たり外れが少ない気がします。
ただ、収穫してその日のうちに下処理をしないとアクが出てしまうこともあり、関東以西にはあまり出回っていない気がします。

ネマガリタケは別名で、チシマザサというのが本来の名前です。姫タケと呼んでいる地方もあるようです。大型の笹の一種で、東北地方から北海道、サハリンに分布しています。
成長した笹の背丈が2mから3mを超えることも多く、ネマガリタケの笹薮はさながら森のようで、初めて訪れた山や土地勘のない場所だと一瞬で方向感覚を失ってしまいます。

その魅力ゆえに、毎年笹薮で迷って遭難する人が後を絶ちません。
さらに、このネマガリタケはクマの大好物でもあり、遭遇する可能性も非常に高くなります。そのため採集しに来ている人たちは必ずクマ鈴をガランゴロンと鳴らしながら笹薮をウロウロしています。




北海道でも山菜の図鑑など本の写真を見ながら探していたのですが、本物のネマガリタケは見つけられず、普通の笹の芽をネマガリタケだと思って食べてたこともありました。
普通の笹の芽も食べられるのですが、やや青臭いし、まあ食べられるかなって感じの食材です。

そして、私たちもついに長らく探し求めていたネマガリタケを見つけました。
あれは6月に入ってすぐ、秋田県玉川温泉の近くの笹薮でのことでした。
キャンプしていた太平山リゾート公園を管理しているおじさんに教えてもらった峠を走っていると、辺り一帯がそれらしき笹薮になってきたので、車を停めて笹薮の中へ。

自分の背丈を優に超える笹を掻き分けながら、目を凝らしているとついに発見しました!
何度も間違えて「これかな〜」とただの笹を収穫していましたが、本物はやはり違います。
本物って雰囲気があります!

ネマガリタケ。色や形が地域によって少し違う。


初めてのネマガリタケに興奮しながら収穫していると、突然ガサガサっと音がして生き物の気配を感じました。

クッ、クマ?!

一瞬血の気が引き、体が硬直しました。
クマがいるかも、と心の準備はしていましたが、どうすればいいか考えを巡らせているうちにガサガサと何かが少しずつこちらへ近づいてきます。

武器になるようなものは収穫に使っていたハサミのみ。
ハサミでクマに対峙するのはあまりにも心もとなかったのですが、下手に背中を向ける方が怖かったので、意を決して待ち構えました。


すると、現れたのはたけのこを取りに来ていたおじさんでした。
おじさんも同じように驚いたようで思わずお互い「うわっ!」 
と声をあげてしまいました。

結構焦りましたが、おじさんでよかったです。ちょうどネマガリシーズン真っ最中だったので、その後も10分おきくらいに笹薮からガサガサと別のおじさんが何人も出てきました。

後で地元の方に話を聞くと
「この時期は町に人がいなくなって、みんな山に入るの。山の中の方が人に会う」
とおっしゃってました。

もしあなたが東北、北海道の春山をドライブしていて、何もない山道の脇に車がたくさん停まっていたら、つまりそれは間違いなくそこにネマガリタケが生えているというサインです。





そんなことで肝を冷やしながらも、初めての収穫に喜びながら車に戻りました。
すると、私たちが駐車していた車の近くに人影が。

それは、ずた袋みたいなリュックサックパンパンにネマガリタケを詰め込んだ、まるで昔話にでてくる優しい妖怪みたいな二人組のおじいさんでした。

目と目があって何か話しかけられましたが、何を言ってるかまったくわかりません。
なんなんだろうと近づいて話してみると、どうやらネマガリタケのことについて何か言っています。

そこで、こんなん取りました〜と、私たちの収穫したネマガリタケを見せると、また何やら言っています。
もにょもにょ言いながら、背中のリュックサックからすっと太いネマガリタケを取り出して手に持っていた鎌でネマガリタケの節をサクッサクッと落としていきます。
そして、節の部分は硬くて食べられないから、節と節の間の部分を食べるんだということを教えてくれました。
根元付近の節は硬くてナイフでトントンしても切れません。少しずつの先端の方に向かって順に節を落としていき、節でもサクッといけるようになれば、そこから先っぽまでは柔らかくて食べられるとのことでした。

十分に言葉は通じませんでしたがネマガリタケの処理の方法、食べられる部分をジェスチャーで教えてくれようとしてたのです。
なにか、ラオスの山村でおばあちゃんと身振り手振りでコミュニケーションが取れた時と同じような楽しい気持ちになりました。


山に入っている60代、70代の人たちは、自然と共存する多くの知恵や知識を持っています。
子供の頃から蓄積されたその知恵や知識を直接教えてもらえることは、本やインターネットで得た情報と違って、体験を伴った記憶として自分に蓄積されていきます。
学ぶ喜びを感じられる瞬間です。





ネマガリタケは東北・北海道地方においては特に珍しい植物ではなく、群生しているので採集できるポイントは多くあるようです。
いろんな山で笹薮を見つけては少し山に入って探すということを繰り返した結果、ある条件を満たしている場所に分布していることに気がつきました。

それは酸性泉の温泉が近くにあって、少し標高の高い峠(1000mくらい)にはほぼ確実にネマガリタケが分布しているという事実。
この条件を満たす地域では、大抵見つけることができました。

茹でて皮を剥いた状態。これを瓶詰めすると1年くらいは持つそうです。




収穫したネマガリタケは軽く茹でて皮をむいて水につけておくとある程度の期間保存ができます。
代表的なオススメの食べ方としては、味噌汁の具にしたり、皮ごと焼いて味噌につけて食べるのがうまい!とよく聞きました。

焼いてマヨネーズをつけても美味しいし、タケノコご飯にしても美味しいかったです。
でも、いろいろ試した結果一番美味しかったのは…


豚肉とネマガリタケのチンジャオロースー。
これは絶品です。

京都の錦市場で売っているような値が張る高いたけのこではもったいなくてなかなかできないけど、ネマガリタケなら惜しげも無く炒められます!
春の東北に行く機会があれば、ぜひ採って焼いて食べてみてください。




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