2017年6月4日日曜日

メキシコの歯医者で奥歯の虫歯を抜歯した



里帰りで日本にいる間、行きつけだった歯医者さんに歯を見てもらった。


半年ぐらい前から冷たい飲み物が滲みたり、空気を吸っても痛い時があったりしたので、これは確実に虫歯だろうと思い、日本に一時帰国したときに治療をしようと楽しみにしていた。


なんとか一時帰国まで持ってくれ…という願いが通じたのか、痛みが悪化することもなく時は過ぎ、無事にその時を迎える事ができた。


メキシコから予約を入れておき、友達に会うより先に歯医者へ。
通い慣れた歯医者さんへの道は思ったより懐かしくもなく、まるでここに昨日まで住んでいたような不思議な気分。
駐車場に車を入れて、受付を済ますと、すぐに名前を呼ばれた。


まずは歯科助手さんに口腔内の掃除をしてもらい、その後、先生の診察が始まった。




先「ちょっと間空きましたね。えーっとどうかな…あ、虫歯ありますね〜。」
け「あ、やっぱりありますか」


先「そうですね。これは…しばらく通ってくださいね。」
け「え!いや、実は今メキシコに住んでまして、一時帰国で帰ってきてるんですよ。」


先「あ、そうなんですか…。ん〜どうだろう。日本にはどのくらいいるんですか?」
け「後一週間ぐらいですね…。どうですかね?」


先「どうしようかな〜。うーん…。とりあえずレントゲン撮ってみましょうか。」




難しい顔をする先生。
思ったより虫歯が大きかったようだ。


でもメキシコの歯医者って無保険だし高そうだし何より信用できないし…
多少無理しても直してほしんだけどなー。










…と、いう希望は叶わなかった。


レントゲンで確認すると、奥歯の歯と歯の間に虫歯ができていそうなので、治療に最低でも1ヶ月はかかると。
無理して治療して飛行機に乗っている間に痛みが出たら大変だからと。


先「メキシコの歯科はアメリカと同じようなレベルだから大丈夫ですよ。ただ、無保険になるので、一本あたり、そうですね、5万円くらいかな。」




5万円って先生…。
出せますよ。5万円。出そうと思えば。
歯は大事だから。
でも、それだけあればメキシコでまあまあ暮らせるんですよ。
確かに歯医者はカンクンの街中でも見かけるけど、アメリカと同じレベルの外観じゃないですよ。


心の中で動揺を抑えながら一旦歯医者を後にする。
しかし、よくよく考えるがやっぱり日本で治したい。


そう思ってはいたものの、人とあったりバタバタしてるうちに、気がつけばもうカンクンに戻ってきていた…。














カンクンの歯医者を見つける



結局治療できずに帰ってきてしまったが、里帰りで結構出費したため、さらにここから虫歯治療で5万円がかかると思うと気が重い。
落ち込んでいる間も歯は痛い。




け「歯医者どうしよかな…。下の歯もちょっと痛いし、2本やったらどうしよ…。ほっといたら抜けるかな。ほっときたいな…。」
み「でも、そんな金額メキシコ人が払えるとは思えないし、私は絶対安いところもあると思う!」
け「でも、先生5万円って言っていたし。知らんうちにぽろっと抜けてくれたらいいねんけどな…。」
み「先生はメキシコの事知らないから!私が探す!」





私が現実から目を背けている間に、Miaが持ち前の検索能力を発揮して、カンクンで歯医者を探してくれた。
幾つかの候補の中から「Dental Natura」という、評判のいいセントロの歯医者さんを見つけてくれた。

Dental NaturaのFacebookページ


いつも思うのだけど、彼女はインターネットで必要な情報を探す能力に長けている。
どんな風に探したか聞いてみると、


⒈GoogleMapで歯医者と打ち込む
⒉地域性を見て、検索範囲を絞り込む(高級住宅街を外し、庶民の生活の中心部を狙う)
⒊料金の相場を知る
⒋レビューを見る
⒌ワード検索で記事を探す


上記のようにこつこつ調べていた。
ありがたい。


ちなみに、歯科治療に関するスペイン語はこんな感じ。

tratamiento(治療)
caries(虫歯)
muela(親知らず)
nervio(神経)
endodoncia(歯内治療/神経を抜く治療も含まれる)
extracción(抜歯)




現地在住の日本人がよく行くオススメの歯医者さんもあったのだが、親知らずの抜歯で500ドルくらい払ったと言っていたので、それこそ日本の先生が想像していた通りの金額。
それでもアメリカ人にとっては安いようで、リゾートついでに歯も治すという、医療ツーリズムの広告も目にした。


自由診療なので料金の幅がかなり広い。
でも、ここはメキシコ。
料金と質は全く比例しない。


むしろ、高い治療費を平気な顔で請求してくる病院は、困っている病人に対して足元を見ているような気がしてどうにも信頼できない。
前に蕁麻疹が出た時にお世話になった先生も、診察料はタダに近いような金額だったが、とても信頼のおける先生だった。


見つけてくれた歯医者は、最初の相談(consulta)は無料。
うん。良心的だ。


勇気を出して仕事帰りに行ってみた。






入り口。ドキドキ…








治療の様子




電話でコンスルタ(無料)のシータをとってから夕方5時半に歯医者へ。
子供を少しでも怖がらせないためなのか、天井や壁にウミガメやお魚の可愛らしいイラストが書かれている。
しかし、そんな子供騙しでは35歳中年の恐怖は全く取り除かれない。


受付を済まし、UNAM(メキシコ国立自治大学)のエプロンを着た童顔のアレハンドロ先生に、状況を説明する。
UNAMはメキシコシティにあるラテンアメリカが誇る歴史ある名門大学なので、少し安心する。
おっさんにはウミガメよりUNAMの方が効果がある。


かわいいウミガメ。診察前で興奮しているため写真がブレている。



直接見てもわからないようので、レントゲンを撮影。
レントゲンはいくらですか?
と聞くと1枚120ペソだった。


結局3枚撮影して、やはり虫歯は見つかった。
ただ、その奥に親知らずも生えてきているので、もし虫歯を直してもすぐに親知らずの治療をしないといけないかもしれないらしい。


レントゲンの写真を写メールに取り、虫歯治療のスペシャリスタにWhat's uppで共有しながら指示を仰ぐアレハンドロ先生。
電話の向こうのスペシャリスタも同意見のようで、
親知らずも生えてきているので虫歯の奥歯は抜いた方いいと。




け「い、今から抜くんですか?」
ア「そうだよ。抜けるよ」
け「えー。そうですか。そうですか。うーん。じゃあ、お願いします。」




流れのままそう返事したものの、少しずつ不安が大きくなってきた。
歯科助手の男の子はBGM合わせてノリノリで器具を準備している。


そんな簡単に奥歯を抜いていいのか?
噛み合わせが悪くなったりしないのか?
もう二度と生えて来ない奥歯…
痛いのも嫌だし…


いろいろ考えていると、ゆっくり情報を集めてから判断した方がいいんじゃないかなと思ってきた。
少し時間をもらって考える。


5分ほど考えた結果、ここでやっていくしかないという決意が固まったので、 心の準備ができたとアレハンドロ先生に伝えた。
再びリズムに乗りだす助手。





そして抜歯が始まった。


麻酔をして、歯茎を触って痛みがないかを入念に確認する先生。
塗布麻酔をしてから注射なので、麻酔自体は痛くない。


完全に歯茎の感覚が無くなったのを確認してから、抜歯。
専用の器具でみちみち奥歯を抜いていく。
痛くは無いが、強い圧迫感を歯茎に感じる。


麻酔中。祈るように組まれた手にも力が入る。



20分くらいかかって、無事抜歯完了。
最後まで痛くは無かったが、緊張感から解き放たれて放心状態になった。


抜歯した歯を見ると、深い穴が歯の側面にぽっかり空いていた。
これだけ深く歯が溶けてたら痛いわけだ…。


施述終了後に、治療前の問診票を記入。
ヒスタミン系のアレルギー薬を飲んでる事を記入すると、
「へー。」とアレハンドロ先生。
大丈夫でしたか?



痛み止めと、抗生物質の処方箋を書いてもらい、禁止事項について説明される。
タバコ、お酒、激しい運動やうがい、直射日光がダメで、海鮮、豚肉も食べてはいけない。
お酒などは1週間経てば大丈夫だけど、豚肉だけは2週間食べてはいけないらしい。


以前、蕁麻疹が出た時も豚肉は絶対ダメと言われていた。
メキシコの豚肉…。一体。













治療にかかった費用



抜歯ということで、400ペソ(=2400円)でした。
レントゲンは1枚120ペソと言われていて、結局3枚くらい撮影したけど、抜歯治療の一部としてくれたようで、全部ひっくるめて込み込み400ペソ。


よかった…。安い。


歯医者を出て、近くの薬局で処方箋の薬を購入。


抗生物質 アモキシシリン Amoxicilina
鎮痛剤 ナプロキセン Onexmol

合計120ペソ。


週末を挟んで2日後に再チェックをしてもらったが、それはなんと無料。
全部で合計で520ペソ


思ってたよりもずいぶん安く大満足。


ちなみに、抜歯せずに神経を抜いて治療する場合はもう少し料金が高くなるようで、
玄関の料金表では2100ペソ〜となっていた。




















その後の経過




抜歯当日は、奥歯を失ったなんとも言えない切なさがあったが、ちょうどいいタイミングでデビ夫人が16歳ですべての歯を抜いていた事を知り、気が紛れた。


念のため抗生物質と痛み止めは1週間飲み続けた。
結果、一度も痛くならなかった。


歯医者の内装はファンシーで、アレハンドロ先生の年の頃はどう見ても20代だったが、
一貫して信頼できる対応だった。
こちらの意見を聞きながら治療を勧めてくれたし、使用する器具に関しても日本と同じような滅菌殺菌を徹底していた。










治療費が思ったよりかからなかった事も、誠実な先生に出会えた事も嬉しかった。
この国では、金を出せばいいサービスを受けられるとは限らない。
そして一番安いサービスはほとんどが安物買いの銭失いになる。


良心的な治療費で、人のために働いている志のある医者はたくさんいる。
その反面、高い治療費をとる事だけを考えて患者の気持ちや家計を無視する強欲で雑な医者もたくさんいる。
見極めるのはなかなか難しいが、強欲で汚い医者がいる分、誠実な医者の輝きが胸を打つ。


メキシコのローカルなお医者さん全てが良いという事では決してなく、
玉石混淆でもちろん質の悪いのも混ざっている。


でも、それはどこの国も同じだろうし、ここは逆に見極めやすい場所なのかもしれない。





抜歯後、玄関に料金が提示されていることに気がついた。

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